06/11/2015
No.0247 陽電子消滅寿命法による細孔サイズの評価
陽電子消滅寿命法はサブnm~nmオーダーの高分子の自由体積や無機物の細孔サイズ、金属・半導体の原子欠陥サイズを計測する手法である。今回導入した陽電子ビーム装置により、バルク材だけでなく、基板上の薄膜(数百nm)も測定可能となった。本手法で求めた細孔サイズはガス透過率や誘電率等と相関する。
●陽電子消滅寿命測定法の原理・装置
装置外観
PALS原理図
空孔半径 vs 陽電子寿命
●高分子の自由体積測定(酸素透過率との関係)
高分子の種類によって、陽電子消滅寿命や自由体積直径分布が異なることがわかる。高分子の自由体積はガス透過性と相関すると考えられるため、自由体積の逆数と酸素透過率の関係をプロットした。自由体積が大きくなるほど、酸素透過率が高くなる傾向が認められる。
高分子のPALSスペクトル
高分子の自由体積換算プロット
自由体積 vs 酸素透過率 プロット
●無機物の細孔サイズ測定
SiO2、SiN、Al2O3等の無機物の陽電子消滅寿命測定により、基本骨格を捉えることができる。SiO2を基本骨格とする3種類のガラスの陽電子消滅寿命や細孔直径分布が明瞭に異なることがわかる。
無機物のPALSスペクトル | 無機物の細孔サイズプロット |
●基板上薄膜の細孔サイズ測定
打ち込みエネルギーを制御することによって、Siウェハやガラス基板上の薄膜の細孔サイズを調べることができる。多孔化前後のTEOS(Tetraethoxysilane)系CVD(Chemical Vapor Deposition)薄膜*の陽電子消滅寿命と細孔直径分布において、多孔CVD膜のみに細孔由来のピークが認められる。
金属・半導体上の薄膜の厚み | 100 nm以上 |
高分子・ガラス上の薄膜の厚み | 300 nm以上 |
試験片サイズ | 14~15 mm角 |
陽電子打ち込みエネルギー | 1~10 keV |
陽電子打ち込み深さ | 数十nm~数μm |
CVD膜のPALSスペクトル
CVD膜の細孔サイズプロット
*CVD薄膜試料は産総研計測標準研究部門との共同研究に基づいて作製した。
<その他の測定例>
逆浸透膜、レジスト、金属、半導体など
カテゴリー
材料・素材
分類
高分子材料