12/13/2021
No.0555 第一原理計算による固体電解質の化学安定性評価 (状態密度, 電位窓)
全固体リチウムイオン電池に使用される固体電解質の1つであるアルジロダイトは、高いLiイオン伝導性を持つ反面、サイクル中の酸化・還元物生成によるセル抵抗の上昇や水分との反応によるH2S発生など化学的安定性が問題となっている。ここでは、異種元素置換による化学安定性変化を評価する方法として、(部分)状態密度 ((P)DOS) および電位窓評価による事例を紹介する。
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硫化物系固体電解質(アルジロダイト)の置換元素の報告事例 |
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【 Li6PS5X (X=Cl, Br, I) : F-43m 】
P ( 4b site ) :Ge, Sn, Si, Sb等で置換
S ( 16e site / 4d site) :O, Se等で置換
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【 実験報告例 】 SをOに置換したLi6PS5-xOxBrの場合 (doi.org/10.1016/j.jpowsour.2018.11.016)
① 0.3 < x < 0.6で、Li対称セルのデンドライト抑制効果を確認
② サイクル試験後、x=0ではLi2S, LiBrを検出、x=0.3ではLi3OBrを検出
➡ 青字を第一原理計算で検証した |
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SをOで置換した場合の影響評価(Li6PS5-xOxBrの例)
※16eサイトのSをx=0, 0.25, 0.5, 1.0の置換率でOに置換し、(P)DOSおよび電位窓(doi.org/10.1021/acsenergylett.6b00593)を計算。
(VBM; Valence Band Maximum, CBM; Conduction Band Minimum) |
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Li6PS5-xOxBrのDOS Li6PS5-xOxBr・分解物の電位窓
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【 DOSの結果 】
✔ 酸素添加に伴いband gapが広がる傾向
✔ 酸素添加に伴いCBMに占める酸素の割合が増加 | 【 サイクル前後の電位窓計算の結果 】
✔ 前:酸素添加により還元耐性が向上し、x=0.5以降CBM値は再び低下
✔ 後:Li2SやLiBrと比較し、Li3OBrはLi金属に対する還元耐性が高い |
【 考察 】
電位窓計算によるxの傾向は、実験のデンドライト抑制効果の傾向とほぼ一致した。デンドライト抑制効果が認められたx=0.3は、酸素添加により
Li金属に対する還元耐性が上がり、Li金属との反応後に生成する分解物も酸素を含み安定かつLi+伝導度が高い(Li2S※1 : 7.5 x 10-11 S/cm
@RT, LiBr※2 : 1.9 x 10-10 S/cm @RT , Li3OBr※3 : 1.0×10-6 S/cm @RT)ため、分解前後のイオン伝導度と還元耐性のバランスがよ
く、 良好なサイクル特性が得られたと考えられる。※1: doi.org/10.1038/s41467-021-26190-2, ※2: doi.org/10.1021/acsami.0c17285 , ※3: doi.org/10.1021/acsmaterialsau.1c00026 |
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合成/サイクル試験前の電位窓評価や試験後の還元分解生成物の安定性評価が可能 |
カテゴリー
自動車, 電池, 材料・素材
分類
リチウムイオン電池, 金属・無機材料, 電子・機能性材料