03/31/2022
No.0592 光劣化ポリエステルのXPSによる表面分析
XPSは試料表面数nmの元素分析(水素以外のすべての元素)に加えて、化学シフトによる官能基分析が可能な手法であり、種々の工業材料の重要な表面分析手法の一つとなっている。
ポリエステルのUV照射による変化をXPSおよび気相化学修飾法により調べた事例を紹介する。
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試料 | |
図1.紫外線照射PETの作成 | |
光表面処理装置により大気中でPET樹脂に紫外線を照射した。
大気中で紫外線照射を行っているので、紫外線だけでなく同時に発生するオゾンの影響も含まれる可能性がある。 |
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XPSによる表面分析 | |
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気相化学修飾法の併用
・ 接着や濡れ性に影響を与えるものの、通常のXPSでは分離が困難な官能基を分析することが可能。
・ 標準試料による反応率の確認 |
表1.気相化学修飾法
官能基 | 反応式 | 標準試料 |
カルボキシ基 | | ポリアクリル酸 |
ヒドロキシ基 | | ポリビニルアルコール |
第1アミン | | ジアミノジフェニルエーテル |
CF3CH2OH:トリフルオロエタノール(TFE)
(CF3CO)2O:無水トリフルオロ酢酸(TFAA)
C6F5CHO:ペンタフルオロベンズアルデヒド(PFB)
図2.炭素の化学状態 |
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元素組成および化学状態
表2.炭素を基準としたときの原子数比
| C N O |
未照射
UV 3分照射
UV 30分照射 | 1.0 - 0.38
1.0 0.003 0.45
1.0 0.018 0.58 |
-検出下限以下
表3.C1s ピークフィッテング結果
| π-π*サテライト C(=O)-O C=O C-O CHx,C-,C=C |
未照射
UV 3分照射
UV 30分照射 | 5 18 - 22 55
4 21 - 23 53
4 24 5 14 52 |
-検出下限以下
・ UV照射により酸素、窒素が増加した。
・ 炭素の化学状態において、C-O、C=O、C(=O)-Oの増加が確認された。
・ UV照射による変化は、照射時間が長い方が顕著であった。
気相化学修飾による解析結果
表4.化学修飾XPSによる表面官能基定量の結果
| ヒドロキシ基
COH/C[total] | カルボキシ基
COOH/C[total] |
未照射
UV 3分照射
UV 30分照射 | 0.004
0.007
0.014 | 0.001
0.011
0.030 |
・ UV照射により、ヒドロキシ基、カルボキシ基ともに増加した。
・ 照射時間が長いほど官能基はより増加した。
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当社では、1988年にXPS-気相化学修飾法を開発し1)、様々な高分子材料や炭素材料への適用実績があります。
表面の改質や劣化など、様々な高分子表面の課題解決に貢献しています。 |
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1)Y.Nakayama, T.Takahagi, F.Soeda, K.Hatada, S.Nagaoka, J.Suzuki and A.Ishitani, J.Polym.Sci.Polym.Chem.Ed., 26, 559(1988). |
カテゴリー
自動車, IT機器, 材料・素材, ライフサイエンス
分類
高分子材料, 有機材料・化成品