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11/09/2021

No.0529 タイプ分析による石油製品中炭化水素の飽和/不飽和成分比の評価

タイプ分析は類似した化学構造を有する化合物を同一グループとして分類および定量を行う方法である。鉱物油、ワセリン、流動パラフィンなどの石油製品に含まれる炭化水素を不飽和度により分類し、各成分の存在比率を数値化することで定量的な試料間比較を行うことができる。

炭化水素のタイプ分析
 鉱物油やワセリン、流動パラフィンのような石油製品は飽和脂肪族炭化水素(Paraffins)、不飽和脂肪族炭化水素(Olefins)、環状脂肪族炭化水素(Naphthenes)、芳香族炭化水素(Aromatics)の4種類の炭化水素が含まれる多成分混合系である。
 これら製品の電界脱離質量分析を行い、タイプ分析を適用することで、検出された成分を下表の7つのタイプに分類してそれぞれの試料中比率を求めることができる。

組成式
不飽和度
可能性のある構造*
P
O
N
A
CnH2n+2
0
×
×
×
CnH2n
1
×
×
CnH2n-2
2
×
×
CnH2n-4
3
×
×
CnH2n-6
4
×
CnH2n-8
5
×
CnH2n-10
6
×
      *P: Paraffins, O: Olefins, N: Naphthenes, A: Aromatics

電界脱離質量分析法

 電界脱離質量分析(Field Desorption Mass Spectrometry; FDMS)法は質量分析計による有機化合物測定法の一つである。フラグメンテーションが起こりにくく、分子イオン[M]+が観測されるため、分子量を正確に推定することができる。
 ESIMSやMALDI-MSではイオン化されにくい脂肪族炭化水素をイオン化することが可能である。
電界脱離イオン化の模式図

分析例: エンジンオイルの基油

質量ピーク強度比をモル分率と仮定して計算を実施
Mn: 数平均分子量, Mw: 重量平均分子量, Mz: Z平均分子量, PD: 多分散度


カテゴリー

自動車, 材料・素材, ライフサイエンス

分類

高分子材料, 有機材料・化成品