06/12/2015
No.0249 高速昇温・急冷時の高分子の融解・結晶化挙動
高分子材料の加工成形時には、急速加熱や急冷により高次構造(結晶・非晶構造、配向性) を変化させ、同一原料から異なる特性を発現させている。超高速示差走査型熱量計(超高速DSC)を用いれば、プロセス条件を分析装置内で再現し、プロセス設計上の指針の探索が可能である。
●DSCの原理
DSC原理図
●微小センサー上の試料外観
ng オーダーの微小試料で測定可能
●汎用DSCとの比較
DSC | 超高速 | 汎用 |
昇温速度 | ~10000℃/s | ~4℃/s |
冷却速度 | ~ 6000℃/s | ~0.3℃/s |
試料量 | ng オーダー | mg オーダー |
データ取込 | ~0.0001 s | ~0.1 s |
温度域 | -80~400℃ | -150~700℃ |
汎用DSCで取得不可能であった高速昇温・急冷時の熱挙動を捉えられる。
●比熱差を用いた微量試料の重量推定
試料:溶融状態から急冷させ、非晶質化したPET
試料サイズから求めた概算重量ともオーダーが一致
●昇温速度変化に伴う結晶化挙動の違いを用いた帰属
試料:溶融状態から130℃に急冷後15min保持したナイロン6
ピークⅠ→Ⅲ:熱履歴,一次結晶,昇温中の再組織化に帰属
●溶融状態から急冷したPPのin situ等温DSC測定
<従来の課題>
汎用DSCは急冷処理ができず、模擬プロセス下での結晶化挙動を捉えることはできない。
測定手順 | |
① | センサーに試料セット |
② | 230℃まで加熱し溶融 |
③ | 所定の保持温度Tまで急冷 (-2000℃/s) |
④ | 10s保持中の発熱を検出 (発熱→結晶化進行) |
結晶化による発熱ピーク検出、温度により発熱ピーク変化
保持温度の違いにより異なる結晶形成
結晶化速度は保持温度によって変化
プロセス設計時の設定温度の指針になる。
例:安定相で結晶化をすばやく完了させたい場合は90℃付近で成形させる。