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12/11/2014

No.0229 γ線滅菌によるポリマーへの影響の評価

医療機器の滅菌方法として、γ線を用いる方法が使われているが、γ線照射後の変色が問題となる場合がある。樹脂の変色の経時変化の解析には、UV-Vis測定やESR測定が有効である。

UV-Vis吸収スペクトルによる変色解析
 
γ線照射によるポリマの概観変化
●塩ビ、アクリルは著しく着色
いずれの試料も、照射後に紫外~可視域に吸収が生成
ポリスチレンの変化は小さく、ポリプロピレンやアクリルは、時間とともに回復傾向
 →後述のESRと相関
塩ビは、ESRの結果と相反し、時間とともに吸収が増大
 →材料の構造変化が生じている可能性あり

図1 各種試料のUV-Vis吸収スペクトル

図1 各種試料のUV-Vis吸収スペクトル

ESRによるラジカル量分析

図2 各種ポリマーのESRスペクトル

図2 各種ポリマーのESRスペクトル

図3 ポリプロピレンのESRスペクトル

図3 ポリプロピレンのESRスペクトル

図4 ポリプロピレンのESRスペクトルの帰属

図4 ポリプロピレンのESRスペクトルの帰属

図5 ラジカル量の経時変化

図5 ラジカル量の経時変化

ESR(Electron Spin Resonance)は、試料中に生じるラジカル(不対電子)を検出する分光法であり、高感度かつ定量的な議論ができるのが特徴である。
発生ラジカル量が材料間で異なる→塩ビ>アクリル>ポリプロピレン>ポリスチレン
発生ラジカル種は材料間で異なり、各ラジカル種の経時変化にも特徴がある
ポリプロピレンは炭素ラジカル(C・)から比較的安定な過酸化ラジカル(COO・)に時間と共に変化
塩ビ、ポリスチレンは経時変化してもラジカル種としては大きな変化なし
アクリルは時間と共にC・が減少し、比較的安定な酸化ラジカル
(CO・(添加剤なと))が残存。
ラジカル量の減少は最初の1日で急峻であり、それ以降、緩やかに減少
UV-Vis吸収スペクトルやESRを組み合わせることにより、変色の発生メカニズムを詳細に議論することが可能


カテゴリー

ライフサイエンス

分類

医療機器・医療材料