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2021年2月19日
分子レベルのイメージングと動的解析を可能にする
高速原子間力顕微鏡「NanoRacer」の世界初導入について

【要旨】  株式会社東レリサーチセンター(所在地:東京都中央区日本橋本町一丁目1番1号、社長:川村邦昭、以下TRC)は、このたび、最先端の高速原子間力顕微鏡(AFM)を世界で初めて導入し、受託サービスを開始します。本装置は、世界最速である毎秒50フレームのイメージング速度を誇り、これまで見えなかった液中分子の高速な動的変化を追跡できます。  当社がこれまで培ってきた高度な前処理技術や分析ノウハウを高速AFMと組み合わせ、ライフサイエンス分野で高まっている分子レベルでの可視化ニーズに応えていくとともに、材料分析を含めた様々な分野への応用展開を加速させ、お客様の製品開発、課題解決に貢献してまいります。 【背景】  原子間力顕微鏡(AFM)は、探針と試料を接触させ、探針を走査させることにより、基板上の分子をナノオーダーの分解能で直接観察できる顕微鏡です。特に溶液中の分子を観察できる液中AFMは、超解像蛍光顕微鏡のように試料を蛍光標識する必要もなく、分子の活性を保った状態でその場観察できるため、ライフサイエンスの分野などで活用されています。  さらに最近、従来型のAFMに比べ、画像取得に必要な時間を短縮した高速AFMと呼ばれる顕微鏡が開発され、より一層注目されるようになりました。画像取得を高速化することで、静止画に限定される従来AFMでは観察できなかった、分子レベルの構造変化を追うことができるようになったからです。しかしながら、実際にはこれらの高速AFMを用いても観察できない、液中での瞬時の分子挙動が数多く存在していました。 【今回の装置導入の重要性】  画像取得時間をさらに短縮するためには、スキャンの高速化やプローブの極微小化、高速制御回路の構築、ソフトウエア開発等が必要になりますが、これらの課題を克服し、今年度、世界最速である毎秒50フレームの速度(20 msec./フレーム)を誇るNanoRacerがBruker社より発表されました(https://japan.jpk.com/products/atomic-force-microscopy/nanoracer)。TRCは、本装置を世界で初めて導入し、当社がこれまで培ってきた高度な前処理技術や分析ノウハウを組み合わせ、ライフサイエンス分野で高まっている分子レベルでの反応挙動のmsec.オーダー可視化ニーズ(例えば、DNA, RNAの塩基配列や反応等)に応えてまいります。  また、TRCは、Bruker社とのライフサイエンス分野での連携強化にも合意いたしました。装置改良を含めた共同開発に着手するとともに、両社共同でワークショップを企画・開催し、最新のアプリケーションをご提供する予定です。

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図1 高速AFM NanoRacerの外観と特徴

【今後の展望】  医薬開発で多発する治験の失敗や開発の遅れ、品質トラブルなどの一因は、メカニズムの本質的な理解の欠如によるものと考えています。本質理解の第一歩である「分子レベルでの反応プロセスの可視化」を高速AFMにより実現することで、創薬研究・技術開発の確実性を高め、開発期間の短縮に貢献していきます。  なお、高速AFMは主にライフサイエンス分野への適用に限定されており、現状、工業材料分野へはほとんど活用されていません。しかしながら、リチウムイオン電池における電気化学的な固液界面の現象の追跡や、高分子材料におけるサブナノメートルオーダーの相分離現象等、本装置が適用できる範囲はライフサイエンス分野にとどまらないと考えられます。TRCは、材料分析を含めた様々な分野への応用展開を加速させ、お客様の製品開発、課題解決に貢献すべく、技術開発を進めてまいります。 【本サービスに関するお問い合わせ先】   本プレスリリースの内容に関するお問い合わせは、下記にお願い致します。 (株)東レリサーチセンター    分析ご相談窓口    E-mail:bunseki.trc.mb@trc.toray    技術開発企画部LI分析推進室 担当:鬼塚    TEL:077-533-8742