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11/18/2022

No.0628 LC-MSを用いた迅速かつ確実な糖鎖構造解析

糖タンパク質の糖鎖は生物活性、体内動態、免疫原性等に大きく関与しているため、糖タンパク質性医薬品を開発する場合には特性解析でその糖鎖構造を明らかにすることが求められる。TRCでは適切な前処理とLC-MSの活用により、多くの糖鎖解析法を検討・開発してきたので、その一例を紹介する。

P01678.pdf
解析方法

 

         糖タンパク質                   遊離糖鎖         蛍光標識糖鎖

            糖鎖マップ     糖鎖のマス及びプロダクトイオンスペクトル         推定糖鎖構造

糖鎖の遊離と誘導体化

 

LC-MS/MSによるN-結合型糖鎖の解析

【 試料:1-酸性タンパク質 】
 ①:蛍光検出 ②:トータルイオンクロマトグラム ③:ピークBのプロダクトイオンスペクトル
【解析結果】
 1-酸性タンパク質から酵素法(PNGase F)で消化して得たN-結合型糖鎖を2-アミノベンズアミド(2-AB)で蛍光標識した。得られた2-AB化N-結合型糖鎖をLC-MS/MSで測定し、各ピークの質量及びプロダクトイオンについて専用ソフトで解析し、糖鎖構造を推定した。
 主要なN-結合型糖鎖はすべてシアル酸が結合していた。また、その構造は複合型の2本鎖、3本鎖及び4本鎖であり、フコースが結合したN-結合型糖鎖は少なかった。測定にUHPLCを用い、専用ソフトで解析することで、迅速かつ確実に糖鎖構造を推定できた。

LC-MS/MSによるO-結合型糖鎖の解析

【 試料: Fc融合タンパク質 】
 ①:蛍光検出
 ②:上段:ピーク5のマススペクトル(多価イオンで検出される)
     下段:デコンボリューションによる分子量算出結果
 ③:ピーク5のプロダクトイオンスペクトル
【解析結果】
 ヒドラジン分解条件を最適化し、Fc融合タンパク質からO-結合型糖鎖を調製した。遊離したO-結合型糖鎖を2-ABで蛍光標識した後、LC-MS/MSで測定し、各ピークの質量及びプロダクトイオンから糖鎖構造を推定した。
 主なO-結合型糖鎖は、シアリル化された3糖及び4糖であった。UHPLCと専用ソフトを使用することで、迅速かつ確実に糖鎖構造を推定できた。 
 10%程度検出されているピーク2は副反応(ピーリング反応)のピークである。他の分解方法を複数検討しているが、現在までのところ副反応を10%以下に抑えられる分解方法は開発できていないので、今後の課題である。 

カテゴリー

ライフサイエンス , 医薬, バイオ

分類

再生医療/培養装置・培地・試薬, 診断薬・検査機器・バイオセンサ, 創薬研究支援, 構造決定・特性解析, バイオ医薬品, 糖, 抗体