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12/11/2014

No.0227 樹脂の耐薬品性試験における溶出物・劣化解析

樹脂材料は様々な環境で有機溶媒、水、酸、アルカリといった液体に接触する機会がある。この時、添加剤等構成成分の脱離、樹脂自体の劣化が起こり、成分の一部が液中に溶出する。LC/MS/MSや分光分析などを用いれば、溶出物量が浸せき溶媒や温度に依存する様子や、浸せきによる樹脂の黄変劣化を解析できる。

LC/MS/MSによる添加剤の溶出挙動分析

  樹脂:PVC(1mm厚、5cm×3cm)      DEHP 2%、TinuvinP 0.015% 溶出条件:溶媒70mL(イソオクタン、水、50%エタノール水、5%酢酸水)      (JIS K7114を基準)      温度(90℃、60℃、室温)

90℃
15日

PVCの外観写真
浸せき後PVCの外観写真

浸せき溶媒による違い(温度90℃)
温度依存性(溶媒イソオクタン)

疎水性の添加剤の溶出量
50%エタノール水>イソオクタン≫水≒5%酢酸水
温度依存性が大
PVCのTgを超える90℃で溶出物量が顕著に増大
LC/MS/MSによる極微量分析により、溶出物量が浸せき溶媒や温度に依存することを把握できた。

イソオクタン浸せき(90℃、15日間)後の樹脂の解析

・断面画像と深さ方向の分析
ミクロトーム切削-LC/MS/MS法
によるDEHPの絶対定量結果
 
ミクロトーム
による切削
(100μm厚)
  ↓
溶媒抽出
LC/MS/MS
 
 DEHPの構造式
Abs強度
1730cm-1/2910cm-1
ピーク面積比
エステル結合C=Ost吸収のイメージング
※DEHP成分以外のエステルも含む
ミクロトーム切削-LC/MS/MS法により、100μm厚さの絶対定量分析が可能となった。
浸せき後の樹脂内部では、DEHPは脱離しておらず、黄変が顕著な表層100μmでDEHPが半減していることがわかった。


・黄変原因の解析
熱劣化による脱塩酸や酸化劣化により、主鎖に共役二重結合が生成して伸長され、黄変が発生したと推定された。
透過吸収スペクトル

・樹脂劣化(硬さ)の解析

浸せき前後品の13C DD/MASスペクトル
硬さ(デュロメータD)

Tg(DSC, 1st Heating)

Tg(DSC, 2nd Heating)

浸せき後試料は、溶媒が染込んだ影響により、可塑化が進行し、硬さが低下した。
樹脂の劣化機構は複雑であるため、複合的な手法による解析が必要である。浸せき後の樹脂について、種々の手法を用いて、深さ方向や全体の解析を行うことにより、劣化の様子を詳細に把握することができる。



カテゴリー

ライフサイエンス

分類

医療機器・医療材料