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09/07/2020

No.0437 PEFC用Pt触媒の硫黄被毒評価

固体高分子形燃料電池(PEFC)において、燃料の改質ガスや自然環境中に存在する硫黄成分は低濃度でも電池特性の低下を引き起こし、初期性能回復が困難であることが知られている。そこで、硫黄被毒のモデル試料について、イオンクロマトグラフィー・TOF-SIMS・XAFSの分析により触媒中の硫黄成分の化学状態を明らかにした。

P00811.pdf
SO2被毒試験
◎硫黄被毒した燃料電池電極触媒の分析上の問題点
 ・被毒した硫黄成分が低濃度である。
 ・主成分である電解質中の-SO3Hと、微量成分である。
 ・被毒した硫黄成分との区別が困難である。
触媒粉末に被毒用ガスを曝露したのみの電解質
 成分を含まない硫黄被毒モデル試料を作成・分析
♦蓄積型であるアノード側被毒について分析を実施

粉末の被毒試験
       
作成条件
 ・触媒:白金担持カーボン
 ・被毒用ガス(SO2濃度:49.8 ppm / N2 balance)を5 ml/minで140時間流す。

CCM (Catalyst Coated Membrane)の被毒試験
運転条件
 ・触媒:白金担持カーボン
 ・カソード側(Ca):空気
 ・アノード側(An):水素
 ・セル温度80℃、加湿温度65℃にて、0.2 A/cm2, 72時間のブランク発電
 ・ブランク発電後、An側をH2+SO2 (5.0 ppm)に切り替え72.5時間の発電

SO2被毒試料の各種分析結果

イオンクロマトグラフィー分析結果
SO42-イオン濃度
 粉末(被毒前):0.004 重量%     大気などの不純物に起因する可能性が考えられる。
 粉末(被毒後):0.59 重量%

TOF-SIMS分析結果
白金の自然酸化に起因

S K端XANES分析結果
硫黄の化学状態
粉末(被毒後):SO42-イオンを有する化学状態
アノード触媒(ブランク発電後): -SO3Hを有する化学状態(電解質由来と推察)
アノード触媒(被毒運転後):硫化物、-SO3H、SO42-イオンを有する化学状態が混在
     * 粉末(被毒後)では、硫酸の存在が認められた。
     * アノード触媒(被毒発電後)では、硫酸および硫化物の存在が認められた。
本研究の成果の一部は新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)からの委託により得られたものです。大同大学関係者各位に深く感謝します。

分析機能と原理


カテゴリー

自動車, 電池

分類

燃料電池