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11/16/2023

No.0681 深層学習による高分子の熱容量予測

当社では、高分子の熱容量について、高度な測定・解析を実施可能である。以下では、ポリ(N-ビニルピロリドン)(PVP) への適用例について紹介する。断熱型熱量計と示差走査熱量計を用いて極低温からPVPの熱容量を測定し、振動モードに基づき熱容量を解析した。深層学習による熱容量の予測値と比較した結果、実測値と相対誤差10%以内で一致することがわかった。

P02536.pdf
高分子の熱容量の解析方法 [1]
ATHAS (Advanced Thermal Analysis System) 解析法


 

1) 実測の定圧熱容量CPexpから、Nernst-Lindemanの (1) 式を使って定積熱容量CVexpを算出する。
2) グループ振動寄与分の熱容量CVgroupを差し引くことによって、骨格振動寄与分の熱容量CVskeletalを算出する。
3) 一方、CVskeletalはTarasov関数の (2) 式によって近似できるので、2) で得られた実測値との二乗平均平方根誤差の最小点から、
  (2) 式の特性温度Θ1Θ 3を決定できる。
4)Θ1Θ 3を決定できれば、CVskeletalを計算できる。それにCVgroupを加算してから、 (1) 式を使えば 熱容量の計算値CPcalを求めることが
  できる。
5) 上記解析により、測定困難な温度領域での熱容量CPcal(DSCのベースライン)を計算により求められる。 CPcalにより、ガラス転移、融点、
  固相転移、液晶転移等の温度範囲・熱量等を正確に見積もることが可能となる。

 

ポリ (N-ビニルピロリドン) (PVP) への適用:熱容量の実測値と深層学習による予測値の比較 [2,3]



CVskeletalの実測値と計算値(Tarasov関数)の二乗平均平方根誤差RMSE (Root Mean Squared Error) の等高線図を示す。
最小点から、Θ 1 = 646.0 K、Θ 3 = 81.9 Kと決定した。


特性温度Θ1Θ 3に対する実測値(横軸)と予測値(縦軸)の比較図を示す。PVPの結果を赤丸で示す。
 
 
機械学習による予測値と実測値とのRMSE等高線図を示す。
赤丸は、最小値(最適な隠れ層構造)を示す。

 
人工ニューラルネットワーク(深層学習)は、他手法(Lasso、XG- Boost、 Random forest)に比べて、最も誤差(RMSE)が小さいことがわかる。
 


PVP(乾燥)の熱容量を実測した結果()を示す。深層学習による予測値()と相対誤差 10%以内で一致する。
測定は大阪大学 大学院理学研究科 附属 熱・エントロピー科学研究センターで実施。

       
 
文献:[1] 石切山一彦, 熱測定, 48, 114-121 (2021). [2] K. Ishikiriyama, Thermochimica Acta, 708, (2022) 179135. [3] K. Ishikiriyama, K. Kondo, Y. Miyazaki, Y. Sasada, K. Sawada, R. Endo, N. Man, M. Nakano and Y. Nakazawa, Thermochimica Acta, 722, (2023) 179456.



カテゴリー

自動車, IT機器, 材料・素材

分類

高分子材料