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08/25/2023

No.0670 毛髪のブリーチダメージの評価

毛髪には、紫外線や熱、ブリーチなど、物理・化学的な変化を伴う様々な処理が施され、そのような外因により、毛髪にはダメージが進行する。過酸化水素処理(ブリーチ)を例にとり、化学的なダメージが毛髪に及ぼす影響を、マクロ~ミクロな視点で評価した事例を紹介する。

P02433.pdf
分析概要
目的: 過酸化水素(ブリーチ)処理による毛髪のダメージの評価
試料: 毛髪3種 (未処理、過酸化水素(30%)10分、24時間)
手法: ① 毛髪およ び水分の分子運動性評価 : TD (Time Domain)-NMR
    ② μmスケールでの化学構造評価  : イメージングIR
    ③ nmスケールでの細孔サイズの評価: DSC
【 評価対象となる構造のサイズ 】
 
 

※ 毛髪は、外側からキューティクル、中間層のコルテックス、中心部のメデュラから構成される。
  化学的な構成成分は、大部分がタンパク質でありシスチン(含硫アミノ酸)を多く含むのが特徴である。

分析結果

① 毛髪の分子運動性評価 : TD-NMR
  毛髪に含まれる水素核の緩和時間から、タンパク質(ケラチン)の結晶(緩和速い)、非晶(中間)、水・NMF*(青、緩和遅い)の量比を評価
  (*NMF: アミノ酸等の天然保湿成分)

  → 処理により、主にタンパク質(ケラチン)の非晶成分が変化・相対的に減少と推定

  

② μmスケールでの化学構造評価 : イメージングIR
  毛髪に含まれる官能基変化を、深さ方向に数µm程度の空間分解能で検出可能
  → 過酸化水素処理に伴い、S含有アミノ酸が酸化されたと考えられ、毛髪内部まで均一に反応が進行
 
③ nmスケールでの細孔サイズの評価 : DSC
  調湿状態でのDSC測定より水をプローブに毛髪中のナノ細孔径/水の状態を評価*
  → ブリーチ処理により半径5~100 nm程度の細孔が増加し、細孔内水が増加
 

カテゴリー

ライフサイエンス

分類

タンパク質