07/23/2015
No.0257 ポリイミド膜の硬化挙動の解析(残存溶媒量、硬化度)
ポリイミドは、成膜時の乾燥条件により溶媒の残存量や硬化度に違いが生じ、弾性率などの物性値にも影響を与える。樹脂設計や硬化トラブルの解析において、固体NMR、GC、物性評価を組み合わせた硬化挙動の解析が有効である。
●ポリイミド試料の作製
※ポリアミック酸NMP溶液(固形分約10 %)をシャーレに塗布後、150℃、190℃、230℃で30分加熱。
●固体NMRによる化学構造・分子運動性解析
・ | 加熱温度が高いほど、スペクトル強度が増加し、分子運動性が低下していると考えられた。 |
・ | 150℃加熱後では原料のポリアミック酸が一部残存しているが、190℃、230℃加熱後にはほとんど存在しない。 |
●GCによる残存溶媒量評価
通常の成膜条件である230℃×30分加熱後でも、NMPは残存していた。
加熱温度が高いほど、緩和時間が大きくなり、分子運動性が低下する傾向が確認された。
※ | CP/MAS法は、1H核の磁化を13C核に移す交差分極 (Cross Polarization) を利用した測定法で、CP効率は試料の分子運動性が低いほど高く、剛直な試料ほどCP/MASの測定感度が高い性質がある。 |
※ | 固体試料では、炭素核緩和時間T1ρ値は、分子運動性が高いほど小さく、分子運動性が低いほど大きくなる。 |
●ナノインデンテーションによる弾性率・硬さ評価
加熱温度が高いほど、硬化する挙動が確認された。
●測定結果のまとめ
加熱温度 | イミド化率 | 残存溶媒 | 分子運動性 | 硬化度 |
150℃ | 低い* | 多い | 高い | 低い |
230℃ | 高い | 少ない | 低い | 高い |
*:COOHが残存
・ | 150℃ではポリアミック酸が存在している。NMPは24 wt%。 |
・ | 150℃→190℃で、イミド化が進行すると同時に、NMPは14 wt%に減少。 |
・ | 230℃では、NMPのさらなる減少(6 wt%)とともに、イミド化がほぼ完了した。 |
分析機能と原理
カテゴリー
材料・素材
分類
有機材料・化成品