07/08/2022
No.0613 深層学習による高分子インフォマティクス
高分子固有の物性データベース(ATHASデータバンク)を用いて、機械学習(人工ニューラルネットワークの深層学習)により定量的構造物性相関を求めた。学習済みモデルを使えば高分子繰り返し単位構造から新規高分子の物性予測も可能である。従来の仮説検証型材料開発に加えて、高分子インフォマティクスによるデータ駆動型材料開発を併用することにより、効率的な材料開発・問題解決が可能となる。
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定量的構造物性相関による物性予測 |
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・ 高分子インフォマティクスでは、定量的構造物性相関を求めて、分子構造から物性への順方向予測だけでなく、目的物性を有する分子構造の
逆方向予測も可能である。
・ 回帰モデルには、高分子の繰り返し構造単位のフィンガープリントを入力した。 |
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物性予測( 順方向予測 )
材料設計( 逆方向予測 ) |
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高分子物性データベース
・ Wunderlichらによって構築されたATHASデータバンク1)を用いた。高分子固有の物性、例えば完全非晶のガラス転移温度Tg0・熱容量差DCp0、
完全結晶の平衡融点Tm0・完全結晶の融解熱量DHm0、デバイ温度の他、熱力学状態量等が登録されている。 |
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人工ニューラルネットワークの隠れ層
・ 隠れ層の構造として、等価構造と減衰構造の2種類を検討した2)。以下では等価構造の結果を示す。 |
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高分子の繰り返し構造単位による定量的構造物性相関2)
・ 等価構造を使って高分子完全結晶の平衡融点と融解熱量について深層学習を行い、定量的構造物性相関を求めた。
・ 最適な隠れ層の構造は、実測値と予測値の平均平方二乗誤差の最小点から求めた。
・ 高分子の繰り返し構造単位だけから、高分子の物性予測が可能であることが示唆される。 |
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医療材料の物性予測検証
・ 医療材料のPoly-p-dioxanone (-CH2-CH2-O-CH2-COO-)nについて物性を予測し、実測値3)と比較した。
・ 機械学習により、物性概算値を短時間で求めることが可能である。 |
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1) 石切山一彦, 熱測定, 48, 114-121 (2021).
2) Kazuhiko Ishikiriyama, Thermochimica Acta, 708 (2022) 179135.
3) K. Ishikiriyama, M. Pyda, G. Zhang, T. Forschner,J. Grebowicz, and B. Wunderlich, J. Macromol. Sci.-Phys. B37, 27-44 (1998). |
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カテゴリー
材料・素材
分類
高分子材料