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02/28/2022

No.0585 ラマン分光法によるSiCパワー素子の熱サイクルストレス評価

使用環境下において幅広い温度変動に曝されるパワーデバイスは熱応力の低減がパッケージの信頼性の観点からも重要である。ラマン分光法でSiCパワーデバイスの熱サイクル前後の応力を評価したところ、熱サイクル後に応力の増加やクラックによる緩和が認められた。

P01810.pdf
SiCのラマンスペクトルと応力評価の原理

 
 ・ 試料に応力が生じることで原子間距離の関数である原子間の結合力が変化し、ラマン線の
  ピークシフトが生じる。
 ・ 4H-SiCの結晶断面において、 応力成分σ11 , σ33  は以下の式で記述される。[1, 2]:
 
   

サンプル応力の温度依存性
1200 V耐圧SiC MOSFET TO-247 discrete package
機械研磨により断面を作製

水平方向成分は温度で大きく温度変動するが、垂直方向成分は変化量が小さい。また、接合近傍であるPointBでは応力の温度変化が大きいのに対してPointAは変化が小さいことがわかる。

熱サイクル試験前後の応力変化(水平方向成分)

  
・ PointAでは、Sample2のみ圧縮応力の増加が認められなかった。これはPointAの応力増加が樹脂起因であることを示唆している。
・ PointBでは、Sample3の圧縮応力増加量が最も小さく、接合付近の応力増加の主要因がはんだあるいはCu起因であることを示唆している。

応力から考える熱サイクルによる素子の劣化過程

熱サイクルによって応力が変化する  温度変化により、弾性変形の範囲を超えた応力が生じ、パッケージ内で不可逆な変化が起こっていることを示唆している。


     線膨張係数差による圧縮・引張の連続により塑性変形が生じる
➡ SiC MOSFETにおいて、温度サイクルを経ることで特に接合近傍で残留応力が増大する傾向が認められた。
      残留応力の増加により、接合付近ではチップにクラックが発生し、それに伴う応力緩和が生じる。
➡ 封止樹脂は主にチップ周辺部に影響を及ぼす。内部になると接合側の影響が支配的となる。
                               [1] R. Sugie and T. Uchida., J. Appl. Phys. 122, 195703 (2017).
                               [2] R. J. Briggs et al., Phys. Rev. B 13, 5518 (1976).

分析機能と原理



カテゴリー

自動車, 材料・素材, 半導体・実装

分類

電子・機能性材料, パワーデバイス・ディスクリートデバイス, 化合物半導体・オプトデバイス