09/25/2014
No.0067 太陽電池用シリコンのドーパント分析
太陽電池用シリコン中ドーパント濃度は電気特性と関係があるため、その濃度を正確に把握する必要があります。B、P、As、Sbなどのドーパント濃度の分析手法としては、SIMS と ICP-MS が挙げられます。それぞれの手法についての特徴と分析事例について紹介します。
SIMS (Secondary lon Mass Spectrometry)
SIMSとは、1次イオンを試料に照射し、生成した2次イオンを質量分析計で測定する手法。
Fig.1 太陽電池用シリコン中のりんのSIMSによるデプスプロファイル
SIMSは1次イオンを試料に照射して、生成した2次イオンを質量分析計で測定する分析方法である。ドーパントのバルク分析の場合には、表面付近の汚染の影響のない、深さ方向の信号強度が一定となる領域までスパッタして測定を行います。
ICP-MS(Inductively Coupled Plasma Mass Spectrometry)
ICP-MSとは、溶液化した試料をプラズマ内に導入し、生成したイオンを質量分析計で測定する手法。
Fig.2 太陽電池用シリコン中のりんのICP-SF-MSスペクトル
ICP-MSでは、試料を化学的な前処理によって溶解したのち分析を行います。ドーパント元素の中には前処理で揮発しやすい元素があり、揮発防止の添加剤を用いて定量的に回収されるような処方を行います。りんについては、ICP-MS固有のスペクトル干渉を回避するために、高分解能型のICP-MS(ICP-SF-MS)による測定が必須となります。
表1には、太陽電池用シリコン中のドーパント濃度をSIMSおよびICP-MSで定量した結果を示します。両者の結果は良く一致しています。
| Method | n=1 | n=2 | Average |
B | SIMS | 6.5E+17 | 6.3E+17 | 6.4E+17 |
ICP-MS | 6.1E+17 | 6.5E+17 | 6.3E+17 |
P | SIMS | 2.2E+15 | 2.4E+15 | 2.3E+15 |
ICP-MS | 2.1E+15 | 2.2E+15 | 2.2E+15 |
As | SIMS | <5E+14 | - | <5E+14 |
ICP-MS | <2E+13 | <2E+13 | <2E+13 |
Sb | SIMS | <1E+15 | - | <1E+15 |
ICP-MS | <2E+12 | <2E+12 | <2E+12 |
表1 シリコン中のドーパント濃度分析結果(SIMSとICP-MSの比較)
atoms/cm3
表2には、シリコン中のドーパント元素の検出下限(SIMS)および定量下限(ICP-MS)を示しました。
| B | P | As | Sb |
SIMS LODs | 1E+14 | 5E+14 | 5E+14 | 1E+15 |
ICP-MS LOQs* | 4E+14 | 5E+13 | 2E+13 | 2E+12 |
表2 SIMSとICP-MSの分析限界
atoms/cm3
LODs:Limits of Detection(検出下限)
LOQs:Limits of Quantification(定量下限)
* 試料1gを処理した場合のLOQである。
分析機能と原理
カテゴリー
電池
分類
太陽電池