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07/14/2016

No.0304 各種炭素材料(電池負極, DLC, 石炭)におけるダングリングボンド量評価 -ESR分析-

● 炭素材料を特徴づけるパラメータ例

炭素材料は下記のようなパラメータが、化学特性や力学特性に影響する。ESR分析を用いると、ダングリングボンド量やキャリア量を高感度で定量評価する事ができる。

炭素構造のイメージ

全体的な結晶構造の乱れはラマンで評価可能

● 負極グラファイト合剤 (Liイオン電池用途) の評価例

Liイオン電池負極において、ダングリングボンドにLiイオンが結合し、サイクル特性を悪化させる可能性がある[文献1]。 ◆図1は、負極グラファイト合剤のサイクル試験前後のESRスペクトルである。試験後ではg=2.002にシャープな信号が出現した事から、c軸方向について構造乱れが大きい(つまり結晶性の低い)炭素に起因するダングリングボンドが生成している事がわかる。 【文献1】 R. Alcántara, et al. Chem. Mater. 18(2006)2293-2301.  

図1. 合剤のESRスペクトル

図1. 合剤のESRスペクトル

● DLC膜の評価例

DLCは機械・摺動部材のコーティングに用いられる。DLCと油剤の摩擦に着目した場合、ダングリングボンドが油剤の吸着サイトとなり、摩擦を低減する可能性がある[文献2]。 ◆表1に、成膜条件の異なるDLCのダングリングボンド量(ESR)と、sp3成分比(NMR)の関係を示した。 ◆低電力で成膜したものほど、ダングリングボンド量が多く、sp3成分が多い。低電力での成膜が摩擦低減に有効である可能性が考えられる。 【文献2】馬淵, 名古屋大学博士論文 乙7095 (2014).

      表1. ダングリングボンド量(ESR)とsp3成分比(NMR)の比較

試料
[成膜時のプラズマ電力]
ダングリングボンド量
(個/g)
sp3 成分比
(%)
300W
9.5E+19
33
600W
8.3E+19
25
900W
6.9E+19
20

● 石炭の加熱評価例

石炭の加熱による反応は、分解/抽出/ガス化におけるキープロセスであり、その反応メカニズム解明は重要である。IR分析より、石炭を加熱すると、400℃以上で脂肪族C-Hが減少する事が知られている[文献3]。 図2は石炭の昇温 in-situ ESR測定結果である。400℃以上でダングリングボンドが顕著に増加する事から、C-Hの熱分解によって(反応性の高い)ダングリングボンドが生成すると考えられる。 【文献3】 藤岡, ほか 新日鉄技報 384(2006)53-57.  

図2. ダングリングボンド量の加熱温度依存性 (昇温 in-situ ESR測定)

図2. ダングリングボンド量の加熱温度依存性 (昇温 in-situ ESR測定)

分析機能と原理


カテゴリー

材料・素材

分類

複合材料