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06/02/2017

No.0321 造形物の総合解析

試料の作製
インクジェット方式の3Dプリンターにより、単純に一層ベタ塗りを積層したもの(塗布方式①)、マス目を交互に塗布して積層しもの(塗布方法②)の2通りの塗布方式で造形物を作成した。また、それぞれの塗布方法に関して、UV照射時間を変えて造形したA~Dの4種類のサンプルを作成した。

図1 試料調整
機械特性評価
引張試験による機械特性を調べた。引張試験による応力-ひずみ線図を図2に示す。造形方法①、②ともUV照射時間を長くなると、応力-ひずみ線図の傾き、すなわち弾性率が高くなり、最大応力も大きくなるが、一方で破断伸度は小さくなる。より硬化が進行することで、剛性が高くなっていることが解る。また、印刷方法の違いで比較すると、塗布方法①のベタ塗りに比べ、塗布方法②の交互に塗布したものの方が、最大応力が小さく、また破断伸度も小さいという結果が得られた。

図2 各造形物の引張試験結果
硬化度
光照射DSC法を用いて、4種の造形物に関して硬化度を調査した。図3に光照射DSCの測定のよって得られた未硬化物と硬化物のDSC曲線を示す。UV照射が長くなるにつれて硬化にともなう発熱ピークが小さくなっていることが確認された。


図3 各造形物の光照射DSC測定結果
(上段:未硬化物、下段:硬化物)
この光照射DSC法を用いて、4種の造形物に関して硬化度を比較した結果を図4に示す。UV照射時間が長くなるにつれて、硬化度は高くなっていた。なお、造形方法による違いは認められなかった。

*未硬化物の硬化発熱量をもとに算出
図4 光照射DSC分析による各造形物の硬化度
寸法安定性
寸法安定性を熱機械分析(TMA)法にて調べた結果を図5に示す。
どの試料においても、高分子のガラス転移(Tg)に由来する階段状の熱膨張率の変化が見られた。このガラス転移温度を比較すると、試料A,BのTgは30℃付近であるのに対して、UV照射時間の長い試料C,Dでは50℃付近に見られており、UV硬化が進行してガラス転移温度が高くなった事が示唆された。
また、試料C,Dでは加熱冷却を行うと、初期寸法には戻らず、膨張していた。これは、硬化による残留歪みが解放されたことによるものと推察された。なお、塗布方法による違いは見られなかった。

図5 熱膨張率測定結果
残存成分、臭気の把握
モノマー等の残存成分や臭気成分等を把握するために、加熱発生ガス分析で調査した。熱脱離GC/MSおよびHPLCによる造形物の分析結果を図6に示す。
どの造形物からもモノマーの他、モノマーの分解物のアルデヒド類や添加剤由来の成分等が検出された。各発生成分の発生量を比較すると、UV照射が長くなるとモノマーの発生量が少なくなっており、硬化が進行していることとよく一致した。検出された発生ガス成分の内、モノマーBとアルデヒド類は特徴的な臭気成分であり、加熱発生ガス分析を行うことで、残存臭気の原因を把握することができた。

図6 造形物の発生ガス分析結果

分析機能と原理


カテゴリー

IT機器

分類

3Dプリンター