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04/14/2022

No.0596 触媒中の貴金属定量分析 ~ICP発光分光分析法による高精度定量分析~

貴金属は化学的に安定であり触媒作用が強いことから、排ガス浄化や燃料電池用の触媒等に用いられている。担持された貴金属量を正確に把握することは貴金属使用量と触媒性能を制御するうえで重要であるが、化学的安定性が高いため、溶解を必要とする分析は容易ではない。

ここでは、ICP発光分光分析法(ICP-OES)を用いて溶解難度が高いRuやRhを分析した事例を紹介する。


Ru-アルミナ中のRuおよびAl分析
 
        
              図1.分析フロー(加圧分解+溶融)

            図2.Ru、Al定量分析結果 (繰り返し2回の分析を実施)
  ・ 酸による開放系湿式分解では試料の溶解が不十分
  ・ 加圧分解によりアルミナは溶解したが、Ruは溶解が不十分(図1.定容液のみ測定)
  ・ 残渣をアルカリ溶融することで、Ruも完全に溶解でき、再現性の良い結果を得ることができる(図1.定容液を測定)

Rh-アルミナ中のRh分析

試料溶解方法
湿式分解①、②それぞれ異なる条件で酸分解、目視で残渣が確認できなくなるまで、ろ別と酸分解を繰り返し、ろ液を順次定容化(1~3液)
加圧分解酸による加圧分解後、定容化
図3.Rh-アルミナ中のRh定量分析結果
 
湿式分解でも目視で完全溶解を判断できるまで分解を繰り返すことで十分にRhを回収
できているように見えるが、加圧分解の分析値と比べると3%程度低値を示している
   
本試料を完全に溶解するには、加圧が必要である

Rh-活性炭素中のRh分析

   表1.Rh-活性炭素中のRh定量分析結果

              分析誤差範囲内で一致
Rhと活性炭素は化学的性質が異なるため、試料の完全溶解には両元素の分解・溶解方法の適用が必要
    
化学的性質を把握した適切な分解・溶解方法を用いることで、分解順序によらず正しい
分析値を得ることができる


カテゴリー

自動車, 電池, 環境, 材料・素材

分類

燃料電池, 排ガス・排ガス触媒, 金属・無機材料