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01/12/2022

No.0572 熱分解-高分解能GC/MSおよび多変量解析による樹脂中微量劣化成分の分析

高分解能装置による熱分解GC/MS測定、デコンボリューションによるノンターゲットスクリーニングおよび多変量解析を組み合わせて活用することで、これまで同定が困難であった樹脂中の微量劣化成分の詳細な分析が可能となった。ここでは太陽電池封止材のEVAを例に、その分析評価結果を紹介する。

P02312.pdf
熱分解GC/MSによるEVAの劣化評価
 太陽電池に長期間使用されていた封止材のEVAについて、セル端部の変色のない箇所とセル中央部の黄変した箇所をそれぞれサンプリングして熱分解GC/MS測定に供し、得られたクロマトグラムを右下図に示した。両者の比較により紫外線吸収剤の減少(右下図中印)が確認されたが、それ以上の差は目視では確認されなかった。
 

測定データの統計解析

 EVAの未変色部および黄変部に対して各n=3で測定を実施し、そのデータに対してデコンボリューション(重複したマススペクトルから個々のスペクトルを抽出する手法)によるノンターゲットスクリーニングを行った結果、それぞれ500を超える成分が抽出された。これらの抽出成分のデータを基に多変量解析を実施した。
 Volcano Plotを作成した結果、各部位に特有の成分が確認された。黄変部に特有の成分(図中印)を同定するため、次にマススペクトルの詳細な解析を行った。
 
                Volcano plot
                

黄変部の成分分析結果

 高分解能測定を行うことで得られる検出イオンの組成式の情報は、劣化物や変成物など予期せず生じた成分の同定に非常に有効である。解析の結果、黄変部の特有成分として下記構造の成分が同定され、黄変部において紫外線吸収剤の変成が生じていることが確認された。
マススペクトル


 ここでご紹介した分析評価方法は、 ①新品と劣化品の比較 ②Lot間での差異比較 ③メーカー違いによる差異比較 などにも有効である

カテゴリー

電池, IT機器, 材料・素材, ライフサイエンス

分類

太陽電池封止材, 高分子材料, 有機材料・化成品, 加熱発生ガス, 着色・変色