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09/26/2014

No.0086 PEFC 電解質膜および触媒層の水の状態・特性分析

自動車やモバイル用途の燃料電池(PEFC)では、セルの小型化を実現するために温度・湿度を制御する補助機器無しで運転できるよう、セル自体の運転温度領域を拡大させる研究が行われている。しかし、低温領域では電解質膜のプロトン伝導性の低下や、水の凍結による触媒層の破損といった問題があり、セル内の水の状態を把握することが重要である。ここでは、電解質膜および触媒層における水の状態や分子運動性について固体NMRから解析した事例を紹介する

電解質膜、触媒層中の水の状態変化

◆ 試料
a)Nafion® 212CS膜、含水率 9wt%
b)Nafion® 212CS膜、含水率 14wt%
c)触媒層※、含水率 10wt% ※Pt/カーボン/Nafion® = 1/1/1(重量比)
◆ 測定 
各試料を調湿して、ガスタイト型の試料管に導入した。また、各温度において15分以上保持した後、1H MAS NMR測定を実施した。

a) Nafion®  membrane (H2O:9wt%)

a) Nafion®  membrane (H2O:9wt%)

b) Nafion®  membrane (H2O:14wt%)

b) Nafion®  membrane (H2O:14wt%)

c) Catalytic layer (H2O:10wt%)

c) Catalytic layer (H2O:10wt%)

Fig.1 1H MAS NMR spectra of water contained in samples


電解質膜中の水
水の凍結や分子運動性の抑制が起こると、NMRではピーク幅が広がり、強度が減少する。Fig.1aでは-70℃でピークが広幅化し、ピーク強度が減少したことから、膜中の水の分子運動性が低下したことが示される。水を多く含む試料では(Fig.1b)、0℃以下では自由水が凍結するためにピーク強度が低下する。

触媒層バインダー中の水
広幅なピークが検出され、水の分子運動性が低い and/or 試料の導電性の影響を受けていると推定される。30℃付近では複数のピークが観測されており、このことはバインダー内に状態の異なる水成分が存在し、その交換速度が遅いことを示している。


水の分子運動性

測定温度によるピーク幅の変化より、水の分子運動性が評価可能である。Fig.2に 1H MAS NMRスペクトルのピーク半値幅(W)と、80℃でのピーク半値幅 W80℃ に対する温度Tでのピーク半値幅WT の比率 (WT/W80℃) を示す。

Fig.2  Half width of peak (W) and change ratio of W (WT/W80℃)

Fig.2  Half width of peak (W) and change ratio of W (WT/W80℃)


低温領域でのWの増加は、水の分子運動性や水の交換速度の低下を反映。触媒層ではWT/W80℃が30℃以下で大きく、水の分子運動性・交換速度の低下が示唆される。
電解質膜では-50~-30℃付近でWT/W80℃が増加することから、水の分子運動性低下の影響は、触媒層よりも低温領域で現れると考えられる。


分析機能と原理


カテゴリー

自動車, 電池

分類

燃料電池