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10/01/2014

No.0141 自動車用CFRPの機械特性・構造解析

自動車部品に炭素繊維強化プラスチックス(CFRP: Carbon Fiber Reinforced Plastics )が使用されている。CFRPは金属材料に比べ比強度・比剛性が高く、成型性に優れているなどの利点を兼ね備えている。ここでは、自動車用CFRP部品について、形態観察、マトリックス樹脂の組成・配向分析、炭素繊維の結晶性、力学特性等を分析・測定した結果を紹介する。

自動車用CFRPの機械特性・構造解析

CFRP

CFRPの断面形態観察

CFRPの断面形態観察

CFRP部品の断面を光学顕微鏡を用いて観察した結果、直径5~6μm程度の炭素繊維が、ランダムに配置していることがわかる。 CFRPの機械特性

測定手法測定結果 (各測定項目とも測定n数=3~5の平均値)
引張試験(歪みゲージ法)引張強さ=120MPa、引張弾性率=32.8GPa、ポアソン比=0.33
3点曲げ試験(歪みゲージ法)曲げ強さ=497MPa、曲げ弾性率=27.1GPa
層間せん断試験(ILSS)24.8MPa
炭素繊維含有率(燃焼法)39%


CFRPの熱変形挙動測定結果(歪みゲージ法)
試料形状、および歪みゲージ貼付箇所

室温から-50℃への冷却過程では、外面は引張歪みが、内面には圧縮歪みが発生していることがわかる。また、70℃付近の歪み挙動は、外・内面ともマトリックス樹脂の軟化による影響により生じたと考えられる。室温復帰時には、外・内面で歪み値が異なっていることより、試料には反りが発生していると示唆される。



マトリックス

マトリックス樹脂の組成分析(顕微IR法)

樹脂部の赤外吸収スペクトル
(下段は標準スペクトル)


赤外吸収スペクトルから、樹脂の組成はウレタン結合、芳香環(少なくとも一置換を含む)および芳香環に結合した酸素(フェニルエーテルなど)、脂肪鎖などから構成されていることがわかる。


マトリックス樹脂の配向分析(ラマン分光法)

樹脂部表面のラマンスペクトル偏光角依存性配向パラメーター(Ⅰ1000/Ⅰ1000)の偏光角依存性

ラマンスペクトルには芳香環構造に由来するラマンバンドが顕著に観測される。入射光の偏光角に対するバンド強度の変化から樹脂の配向状態に関する情報が得られる。本試料では、偏光角に対するバンド強度比(配向パラメーター)の変化は小さく、表層、中央ともに無配向状態であることがわかる。ただし、配向パラメーターの値が表層と中央で異なっており、芳香環構造に関する組成比に差異があることが示唆される。



炭素繊維

炭素繊維の内外構造差(ラマン分光法)

炭素繊維の表層(~100nm)と中心のラマンスペクトル


結晶性の内外構造差(バンド強度比(ⅠV / ⅠG) )

ラマンスペクトル形状の変化から炭素繊維の結晶性に関する情報が得られる。通常の顕微ラマン測定では空間分解能は最小で1μmとなるが、試料を傾斜断面化することにより見かけ上の空間分解能を上げることができる。本試料では表層1μm以内の領域において結晶性が顕著に変化していることが確認できる。

分析機能と原理


カテゴリー

自動車, 材料・素材

分類

複合材料