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09/29/2014

No.0121 自動車用樹脂部品の耐候性試験による劣化解析

自動車には、多くの部品に樹脂(高分子)材料が活用されている。これらの部品は、長期にわたって太陽光や風雨をはじめとした厳しい環境下で使用されるため、性能低下(劣化)が生じる可能性が高い。したがって、各部品の耐候性、構造変化の有無度合いの把握が重要となる。ここでは、自動車用樹脂部品に対して耐候性試験を行い、どのような劣化が生じているかを調べた例を紹介する。

試料:バンパー  ・ポリマー成分:エチレン/プロピレン共重合体  ・タルク、数種の酸化防止剤含有

耐候性試験の条件(JIS D0205 WAN-H準拠)
 装置      :サンシャインウェザーメーター
 放射照度   :255W/m
2
 温度      :83℃
 水噴付周期  :60分間照射中に12分
 試験時間   :400時間

耐候性試験 試験片

耐候性試験 試験片


ポリマー成分の変化

GPC

未試験品と比べて、試験品(バルク)の分子量分布形状は殆ど差が見られない。一方、試験品(表層付近:~100μm)の分子量は大きく低下した。


固体13C NMR

未試験品と試験品(バルク)のスペクトルには殆ど違いが見られない。一方、試験品(表層付近)では、エステルのカルボニル炭素や、エステルやエーテル等の脂肪族炭素に由来すると考えられるピークが見られた。


深さ方向の変化

赤外イメージング断面測定

試験品では、表面から約200μmの領域で
エステルが多く検出された。
試験品では表面近傍でタルク濃度が減少、
約100μm付近で濃度が増加した。
赤外スペクトル

XPS
最表面(~10nm)のC 1Sスペクトル


試験品表面から100μmの深さまで、
C-O、C=O、COO等(酸化成分)の割合が高いことを確認した。


TOF-SIMS

試験品表面から100μmの深さまで酸化起因と思われるC2H3O+を検出した。
また、300μmの深さにかけて、酸化防止剤の著しい減少を確認した。

耐候性試験により、下記変化が発生する。
  • 約100μmまでの深さ
分子量低下 (GPC)
ポリマー成分の酸化 (NMR、FT-IR、XPS、TOF-SIMS)
タルクの偏析(FT-IR)
  • 約300μmまでの深さ
酸化防止剤が減少 (TOF-SIMS)

分析機能と原理



カテゴリー

自動車, 材料・素材

分類

高分子材料