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02/18/2016

No.0271 高分解能LC/MS/MS(MS)分析

LC/MS/MS(イオントラップ型 TOF )装置を用いて、医薬品分解物の構造解析を実施した。今回は、降圧剤として知られている Reserpine(C33H40N2O9)の熱分解物を用いて、MS3 及び高分解能 LC/MS/MS で構造推定を行った例を紹介する。

Reserpine は逆相HPLCで14.1分に溶出し、熱分解物は14.8分約0.5%濃度で検出。
MS1 でのESIマススペクトルより、Reserpine のプロトン化分子([M+H]+)であるm/z 609、熱分解物からはm/z 579 を観測。 Reserpine と熱分解物の差は30Da。
それぞれのプロトン化分子をプリサーカーイオンと してMS2 を実施。 母核左側にある -OMe基が脱離していると推定されたが、詳細は不明。
さらに 30 Da 異なるイオンである m/z 397 及び m/z367 をプリサーカーイオンとして MS3 を実施。
Reserpine からは 
m/z174,熱分解物からは m/z144 のイオンを観測。

LCMS-IT-TOF(島津製作所)により取得

TOF/MSにより観測されたそれぞれのイオンを組成演算した結果、下段に示したように非常に誤差の小さい値で高分解能測定結果が得られ、Reserpine 熱分解物は以下に示す構造であると推定された。


Reserpine
 
m/z
Molecular Formula
Exact Mass
Error
MS1609.2868C33H41N2O9609.28125.6
MS2397.2128C23H29N2O4397.21270.1
MS3174.0905C11H12NO174.0919-1.4

Pyrolysis product
 
m/z
Molecular Formula
Exact Mass
Error
MS1579.2763C32H39N2O8579.27065.7
MS2367.2049C22H27N2O3367.20222.7
MS3144.0828C10H10N144.08131.5

Reserpine 原体の MSn 帰属情報は以下の資料を参考にした。
・AccuTOFを用いた精密質量測定による有機化合物の構造推定/確認, MS Tips, Technical Information, 日本電子(2007)
・森口宏一,梅木卓,SCAS NEWS 2002-1, 住化分析センター(2002)




カテゴリー

ライフサイエンス , 医薬

分類

構造決定・特性解析