close

02/21/2022

No.0582 日焼け止め化粧品中の無機元素分析

日焼け止め化粧品中には多くの無機化合物が添加されており、それらの量や粒径は効能に影響を与える。また人体に適用する製品であるため、有害元素量の把握も重要である。元素分析手法により、市販の日焼け止め化粧品に含まれる無機元素の粒径や量を評価した例を紹介する。

P02365.pdf
添加ナノ粒子(TiO2&ZnO)の粒径測定微量不純物元素の定量分析
日焼け止めを分散させた超純水をシングルパーティクル ICP質量分析法(spICP-MS)により測定することで、含有するナノ粒子の粒径評価が可能である。日焼け止めを酸を用いた湿式分解により溶液化し、ICP発光分光分析法(ICP-OES)により有害元素を定量した例を示す。

図1. 日焼け止め中のTiO2およびZnOの粒径測定結果
 
spICP-MSは元素を識別して粒子種ごとに粒径を測定することができる。また、溶液中の濃度がppmレベルと低い場合においても評価が可能である。
 
表1. 微量元素の定量分析結果 

 
有害不純物元素の多くは酸との反応により揮散しやすい性質を持つため、分析元素を定量的に回収できる溶液化法を選択することが重要である。
定量下限値は、試料共存成分、測定手法、分析元素、分析に供する試料量などによって変わる。

主要元素の定量分析

日焼け止め中の主要元素は、分析元素ごとに最適な化学的前処理により試料を溶液化し、ICP-OESで測定することで定量できる。Siはシリカ(無機けい素)やシリコーン(有機けい素)として添加される。
有機けい素化合物は熱により揮散損失するが、試料中のSiを無機化する工程を加えることで、Si量を高確度に定量できる。
 
表2. 主要元素の定量分析結果

一般的にTi、Znは酸化物、Alは水酸化物、Siはシリカやシリコーンなどの形態で添加される。
表3. 無機けい素(SiO2)と有機けい素(ジメチルポリシロキサン)の両方が含まれる試薬中のSi分析結果

 Si理論値:SiO2 5.8質量%(試薬表示値)、残りをジメチルポリシロキサンとして算出
 (3桁目は参考表示)
 
一般的な無機酸には溶解せず、試料中での化学形態により安定性や分解挙動が異なるSiについても、ノウハウにより妥当性のある分析が可能である。

カテゴリー

ライフサイエンス

分類

電子・機能性材料