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10/26/2015

No.0267 充放電過程におけるLIB正極活物質の構造解析

LIB正極を目的の電位に調整して、活物質のバルクや表面における構造、化学状態を解析することができる。また挿入・脱離に関与する正極Li成分の化学状態について、6Liラベルを用いた固体NMR法より観測可能となった。

●正極の構造解析

正極サンプル: LiNi0.8Co0.15Al0.05O2 (NCA)


電位調整


ハーフセルを作製し電極試料を目的の電位に調整
<調整条件>
正極: LiNi0.8Co0.15Al0.05O2
対極: 金属Li箔

セパレータ : PP
電解液 : 1M LiPF6
      (EC/DEC = 1:1 vol%)
X線回析



<わかること>
活物質の結晶構造
<結果>
(003)の回折(c軸: 積層方向の距離)が電位によって変化
⇒バルクでの連続的変化
  
ラマン分光

<わかること>
活物質表面の構造変化(表面に敏感)
スポット分析、ライン分析が可能
<結果>
散乱強度 LiCoO2 ≫ LiNiO2
3.5 VでCoの価数変化
⇒表面は3.5~3.7 Vで大きく変化
固体NMR

<わかること>
活物質の化学状態変化
Li周辺の局所的な構造
<結果>
充電で化学シフトが小さくなる
⇒常磁性の影響が低下

⇒Ni3+→Ni4+の価数変化
  (バルクでの連続的変化)

●充放電に関与するLi成分の局所構造解析 (固体NMR)

脱離・挿入しやすい部位の6Liラベル化スキーム



NCA正極の固体6Li, 7Li NMRスペクトル (3.5 V)


Liが脱離した正極部位を天然存在比の小さい6Liでラベルすることで、充放電に寄与する成分を強調して観測できる

<結果>
・充放電に寄与しない成分(7Li)のNi3+近傍成分ピークは、充放電前(7Li)より、化学シフトが小さい(右)方向へわずかにシフト
・放電で挿入された成分(6Li)のNi3+近傍成分の化学シフトは最も大きい
   ⇒放電で正極に挿入されたLi は、常磁性の強いNi3+近傍に存在

長谷川裕一、崎山庸子、青木靖仁、第53回電池討論会(2013)


分析機能と原理


カテゴリー

電池

分類

リチウムイオン電池