09/30/2014
No.0125 AFM-IR(nanoIR)による高分子フィルム内部の劣化分析と微小異物分析
AFM-IR(nanoIR)はAFMと赤外分光法を組み合わせた新しい分光手法である。AFM-IR(nanoIR)を用いて、アルカリ処理したポリイミドフィルムの表面変性部と内部の正常部との界面分析、および微小異物分析を行った結果を示す。
AFM-IR(nanoIR)測定原理
IRレーザー光を試料に照射すると、試料がIR光を吸収し熱膨張する。この熱膨張によりカンチレバーが大きく変位(励振)する。一方、吸収がない場合はほとんど変位しない。したがって、照射レーザー光の波長を掃引し各波長(波数)でのカンチレバーの変位の大きさをプロットすると、赤外吸収スペクトルと類似のデータが得られる。
*Anasys Instrumentsご提供
高分子フィルム内部の劣化分析 アルカリ処理ポリイミドフィルム
アルカリ処理したポリイミドフィルムの表面変性部と内部の正常部との界面近傍を、AFM-IR(nanoIR)により分析した。従来のFTIRスペクトル(上図) (※1)およびAFM-IR(nanoIR)スペクトル(下図)を示す。黒がフィルム内部の正常部のスペクトル、赤が変性部のスペクトル、青は界面のスペクトルである。正常部、変性部ともに従来のIRスペクトルと類似のスペクトルが得られている。
変性に伴い、イミド結合のC=O 伸縮振動に由来する1720cm-1のピーク強度が減少している。このピーク強度のマッピング像を右に示す。正常部と変性部の境界が明瞭であり、中間変性領域がnanoIRの空間分解能(約100nm)以下の幅しかないことが分かる。このことから、AFM-IR(nanoIR)により約100nmの空間分解能(※2)で劣化分析が可能であることが分かる。
(※1) 従来のFTIRスペクトルは、フィルム表面について処理前後で測定したものである。
(※2) 空間分解能は試料の厚みや吸収係数、熱膨張率等により変動する。
微小異物分析 フィルム表面の球状異物
1ミクロン程度の球状異物を採取し、AFM-IR(nanoIR)で定性分析を行った。以下に異物のAFM像および得られたAFM-IR(nanoIR)スペクトル(黒線)を示す。顕微FT-IRでは測定困難な試料量で、良好なS/Nのスペクトルが取得できている。標準スペクトル(青線)との比較から、異物はポリスチレンと推定された。
サンプリング後プリズムに固定した異物のAFM像(厚み調整後)
• | AFM-IR(nanoIR)を用いることでサブミクロンの異物でもIRスペクトルが取得可能 |
• | 微小部サンプリング技術(マイクロサンプリング、断面加工技術)との組み合わせで、微小異物の高い定性能力を発揮 |
関連ページ:微小異物分析・付着物分析 "その異物あきらめないで"
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材料・素材
分類
高分子材料