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07/29/2014

No.0006 LCDパネルの液晶層の微量溶存気体分析

LCDパネルの表示不良を引き起こす大きな要因としてパネル内での気泡の発生が挙げられる。気泡の発生は熱、衝撃などにより誘起されることが多いが、その 発生メカニズムは多様であり、不明な点も多い。LCDパネル中に発生した気泡をサンプリングし、ラマン分光法で分析することにより、発生した気泡の組成に 関する情報を得ることが出来る。加えて、ラマン分光法では目視サイズの気泡が発生していないパネルでも溶存ガスの測定が可能である。ここでは、液晶中の溶 存ガスの分析により得られた分析結果を紹介する。

LCD市販の携帯(未使用)のLCDパネル中のガス組成を測定した。パネルには気泡は発生しておらず、ガスは液晶中に溶存していたものである。

ラマンスペクトル

ラマンスペクトル

ガスの組成比(体積分率)

ガスの組成比(体積分率)

パネル A, C, D には窒素が高濃度に存在していたが、パネルBでは一酸化炭素比率が相対的にかなり高く検出された。一酸化炭素は熱処理などにより、パネル中の各部材から発 生する可能性の高い成分である。熱などの外的エネルギーがパネルに加わった場合、これらのガス成分による気泡発生の可能性が高く、パネルBは潜在的に気泡 が発生しやすいと考えられる。

熱処理による気泡発生モデル実験

LCDパネルに部分的な熱処理を与えて気泡を発生させた。条件1では高温で瞬間的に気泡を発生させ、徐熱を行った。条件2では比較的低温で長時間の熱処理を行い、気泡を発生させた。未処理領域の溶存ガス組成との比較から発生メカニズムを考察した。

熱処理による気泡発生モデル実験

熱処理による気泡発生モデル実験


ラマンスペクトル

ラマンスペクトル


帰属
未処理
条件1
条件2
CO2
9.70%
0%
70.00%
CO
5.50%
13.30%
10.50%
N2
84.60%
82.10%
15.30%
CH4
0%
0.40%
0.20%
H2
0.20%
4.30%
4.10%
ガスの組成比(体積分率)
未処理部の結果から、初期状態において、比較的高い二酸化炭素や一酸化炭素の溶存比率を有することがわかる。徐熱とともに急速な気泡サイズの収縮が見られ た条件1では、比較的未処理に近い組成比が得られた。一方で、気泡サイズの変化しない条件2では、二酸化炭素が主成分となった。
条件1では溶存ガス成分の熱膨張と凝集により、一時的な気泡の発生と再拡散が起こったと推測される。一方、条件2では部材から発生した二酸化炭素により液晶中の溶存ガス量が飽和し、半恒久的な気泡が発生したと考えられる。

分析機能と原理


カテゴリー

IT機器

分類

液晶ディスプレイ