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10/18/2021

No.0509 光熱変換赤外分光法(O-PTIR)を用いた微小異物の分析

光熱変換赤外分光法(Optical-photothermal IR spectroscopy, O-PTIR)は、従来の顕微FT-IRでは困難な約1 µmの領域を、非接触で測定することが可能な新規手法である。O-PTIRを活用することで、サンプリングが困難な場所に存在する微小異物の赤外分析による定性が可能となった。

O-PTIRの原理、特徴
◇ 原理
  測定対象物が赤外光を吸収し、試料および周辺媒体が膨張

 ➡ 同軸で入射されたプローブ光(可視光:532 nm)の散乱強度変化を検出して赤外スペクトルを取得

検出感度は、赤外吸光係数熱膨張率に依存
◇ 特徴
・ 赤外光の回折限界を超えた空間分解能(約1 µm)で赤外分析が可能
・ FT-IRと同様のスペクトルを取得可能
・ プローブ光を用いた検出機構のため非接触測定であり、複雑な形状のサンプルの場合も光学顕微鏡で観察可能であれば測定可能
・ サンプル形状を保持したまま測定でき、他手法と併用した分析も可能

基板金属配線上の微小異物の分析

マイクロスコープ3D像

 
最表面より約450 µm 深い位置の金属配線上に異物を観察。
・ 異物が深い位置にあるため、採取が困難
・ 試料形状および異物が微小な点で加工が不可
  → 非接触測定が 可能なO-PTIRで測定
■異物のO-PTIR分析結果

      異物は、ポリスチレンと推定

積層フィルム中微小異物の分析

マイクロスコープ像


断面観察より、6~10 µmサイズの異物が層3中に観察。
・ 積層フィルム中にあるため、表面からの測定が不可
・ 異物が微小で、周辺樹脂が柔らかいため、サンプリングも困難
 → 異物部分の断面を作製し、O-PTIR分析を実施
■異物のO-PTIR分析結果

異物は、高級脂肪酸塩(滑剤等の混入の可能性)と推定
O-PTIR測定により、従来のFT-IRでは分析が困難な微小異物の分析が可能となった。複雑な凹凸形状のサンプル(半導体等の無機材料)や粘着剤上に付着した微小異物、ポリマー材料(フィルム、樹脂成型品等)の内部に埋まった異物であっても、O-PTIRを用いることでより詳細な構造解析が可能となる。

カテゴリー

材料・素材

分類

電子・機能性材料