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10/01/2014

No.0137 レーザーラマン分光法による炭素材料の評価

炭素材料は“古くて新しい工業材料”として、非常に広範囲な分野に使用されている。炭素材料は単一の元素から構成されているにもかかわらず、その構造は非常に多様である。ラマンスペクトルは様々な炭素材料の構造を敏感に反映することから、X線回折や透過電顕などとともに炭素材料の有力な評価手法となっている。ここでは、様々な炭素材料のラマンスペクトルの例、および直径8μmの炭素繊維の断面について径方向の黒鉛化度の分布を調べた結果を紹介する。

様々な炭素材料のラマンスペクトルの例

完全な構造を有するグラファイト(単結晶)は1581cm-1に単一のラマンバンドを示す(図中C)が、構造の乱れが大きくなるにつれ(C→B→A→E)、ラマンスペクトルは以下のように変化する。
(1)1360cm-1付近に新たなラマンバンドが生じしだいにその強度を増す。
(2)1580cm-1付近のラマンバンドが高波数側へシフトする。
(3)2つのラマンバンドの幅がしだいに広くなる。
(1)~(3)は構造の乱れにしたがって同時進行するが、ある程度以上乱れがおおきくなると(3)のラマンバンドの幅の変化が主となり、非晶質なアモルファスカーボン(E)のようなラマンスペクトルを示すようになる。 また、石灰(G)やピッチ(F)などの縮合芳香環化合物の混合物と考えられるものも炭素材料と良く似たラマンスペクトルを示す。一方、sq3性の炭素から成るダイヤモンド(D)は1332cm-1に非常にシャープなラマンバンドを示す。

様々な炭素材料のラマンスペクトルの例

直径8μmの炭素繊維の断面について径方向の黒鉛化度の分布結果

レーザーラマン分光器に光学顕微鏡を組み合わせたレーザーラマンマイクロスコープ(顕微ラマン分光器)を用いることにより、空間分解能1μmで光学顕微鏡像と対応させた微小部の評価が可能である。下図に、直径8μmの炭素繊維の断面について径方向の黒鉛化度の分布を調べた結果を示す。

直径8μmの炭素繊維の断面について径方向の黒鉛化度の分布結果




分析機能と原理


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材料・素材

分類

複合材料