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09/22/2014

No.0027 青紫レーザーダイオード動作時の微小部結晶性・欠陥評価と温度分布計測

レーザーダイオード(LD)動作時は、出射端面の温度上昇により端面劣化が生じる場合がある。ラマン分光法を用いれば端面の活性層部分の温度を計測することが可能である。また、顕微分光である利点を生かし、活性層近傍の温度分布も分析することができる。ここではラマン分光法を用いたLD端面の温度計測事例と、カソードルミネッセンス(CL)法を用いた端面劣化LDの解析事例を紹介する。

ラマン分光法によるLD端面温度計測

ラマン測定結果

Stokes、anti-Stokesラマン線強度比

Stokes、anti-Stokesラマン線強度比は、振動準位の始状態の確率比に依存する。熱平衡状態では、この確率比はボルツマン分布で与えられる。ラマン測定結果を元に、上式を用いて結晶の温度を計測することが可能である。

測定場所説明図

測定場所説明図

図1 活性層の温度(電流値依存性)

図1 活性層の温度(電流値依存性)

図2 活性層近傍の温度

図2 活性層近傍の温度

図1に示すように、電流値の増大とともに活性層温度が上昇していることが分かる。電流値100mA以上では、出射端面の活性層部分で180℃程度まで上昇している。図2では、活性層近傍の温度勾配を計測した例である。LDの駆動状態での熱分布は、素子寿命に大きく影響するため、主にシミュレーションによる解析がなされている。顕微ラマン分光法を用いれば活性層近傍の駆動状態温度分布が実測できるため、シミュレーション結果との対比等からより正確な素子解析が可能になると考えられる。

端面劣化LDのCL分析例

『LDの分析手法』
欠陥分布: TEM, CL, PL
不純物分布: SIMS, TEM-EDX, EELS, SCM, SSRM, CL
応力: Raman, CL, μ-XRD, NBD, CBED
端面温度Raman, nano-TA

図3 未劣化LDのCL強度像(活性層)

図3 未劣化LDのCL強度像(活性層)

図4-1 通電後のCL強度像(活性層)

図4-1 通電後のCL強度像(活性層)

図4-2 通電後の発光波長分布(活性層)

図4-2 通電後の発光波長分布(活性層)

CL法では、微小部の発光スペクトル解析から、発光特性に影響する欠陥の種類や分布についての知見を得ることができる。ここではCL法を用いて通電劣化前後での活性層発光強度の比較を行った。図3、図4-1に示すように、通電劣化後ではリッジ部下で活性層の発光強度が低下している。また、図4-2に示したように、リッジ部下で発光波長が局所的に変化しており、InGaN活性層のIn組成分布や素子の局所的な応力が変化している可能性が考えられる。

分析機能と原理


カテゴリー

半導体・実装

分類

化合物半導体・オプトデバイス