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10/26/2015

No.0268 リン系難燃剤添加ポリマーの難燃性評価

燃焼初期における構造変化を調べるうえで、GCIB-TOF-SIMSやFT-IRを用いた固体表面近傍の組成情報の取得は有用である。燃焼試験後のポリマーについて、難燃剤の作用の一つである不燃層生成に着目して分析を行ったところ、燃焼時間に応じた組成や厚みの変化が確認出来た。

●燃焼メカニズムと難燃剤の作用


●試料・燃焼試験法

<サンプル組成>

含有成分
重量%
ポリブチレンテレフタレート(PBT)
90
難燃剤(縮合リン酸エステル)
10

<水平燃焼試験>

・炎のサイズ:20 mm
・バーナー口から試料までの距離:20 mm
・試料中央部を所定時間加熱(5~25 sec)


●燃焼初期の不燃層の構造解析(GCIB-TOF-SIMS)

水平燃焼試験後の試料についてGCIB-TOF-SIMS分析を行ったところ、最表面(約10 nm)に難燃剤の分解によって生じたポリリン酸の皮膜が形成されていることが確認された。最表面のポリリン酸濃度は、15 sec ⇒ 25 sec で減少するが、試料内部におけるリン酸・ポリリン酸の濃度は燃焼時間と共に増加する傾向が認められた(厚いリン酸高濃度層の形成)。


水平燃焼試験後の表面状態
 

 

 

 

 


●難燃剤入りPBTの構造解析(加熱 + FT-IR)


◆難燃剤含有PBTとPBTについて、300℃まで加熱させた際の構造変化をFT-IRで調べた。
◆難燃剤含有PBTではPBTのみと比較して965、770 cm-1付近に難燃剤由来の吸収帯が検出された。
300℃加熱後では、PBTの結晶化度の増加のほかに、難燃剤含有PBTについて、1000 cm-1付近に増加する吸収帯が検出された。これは、難燃剤の変性物(リン酸化合物)であると推察され、TOF-SIMSの結果と一致する。



GCIB-TOF-SIMSとFT-IRを組み合わせることで、不燃層組成や厚み(皮膜の形成し易さ)を評価可能

分析機能と原理


カテゴリー

材料・素材

分類

高分子材料