09/26/2014
No.0087 PEFC 燃料電池材料の劣化解析
燃料電池の実用化においては、各部材の長期安定性が非常に重要な課題である。ここでは、触媒層に着目し、触媒層カーボンの腐食評価、および触媒層に含まれるフッ素系電解質の分解物について調べた例を紹介する。
触媒担持炭素の過酸化水素による構造変化
触媒担持炭素の腐食によるガス拡散性の低下や内部抵抗の増加は、セル性能の劣化原因として挙げられる。燃料電池の運転中に生じるH
2O
2が炭素担体へ及ぼす影響を評価するため、その模擬試験として過酸化水素暴露試験を行った。触媒担持炭素のモデル試料としてはケッチェンブラックを用いた。
処理温度:90度、処理湿度:80%RH、処理時間:100時間、過酸化水素濃度:30%、N2ガス流速100ml/min
赤外吸収スペクトル測定
C=O結合の生成⇒OHラジカルによる親水化
ラマンスペクトル変化
Gバンド位置の高波数シフト⇒網面サイズの減少
1700cm-1のラマンバンド⇒官能基付与(C=O結合等)に由来するスペクトル変化
これらの分析結果は、酸化・親水化の指標として用いることが可能である。
アノード触媒層中の電解質分解物の19F NMR構造解析と定量1)
電解質膜、アイオノマ共にNafion
®を用いたMEAについて、運転試験後、触媒層を採取した。その抽出物について電解質分解物(6種類、うち 2種は既知
2))の構造決定を行った。各成分の定量を行うことも可能である。電解質分解物の定量により、生成水中のフッ化物イオン量とは異なる視点から、フッ素系電解質の劣化について調べることができる。
19F NMR spectrum of the extracts from the anode catalyst layer
Gradient-selected 19F- 19F COSY of the extracts from the anode catalyst layer
Abundance of the side-chain fragments (A to F ) in the extracts of the catalyst layers
本研究の一部は、新エネルギー・産業技術総合開発機構の委託事業(リーダー:大同工業大学 堀教授)で実施したものです。関係各位に感謝申し上げます。
参考文献 |
| 1) | Mari Takasaki, Yoshitsugu Nakagawa, Yoko Sakiyama, Kenji Tanabe,
Kenji Ookubo, Nobuyuki Sato, Tomohiro Minamide, Hiroshi Nakayama, Michio Hori,
ECS Transactions, 17, 439 (2009). |
| 2) | J. Healy, C. Hayden, T. Xie, R. Waldo, M. Brundage, H. Gasteiger,
and J. Abbott, Fuel Cells, 5, 302 (2005) |
分析機能と原理
カテゴリー
自動車, 電池
分類
燃料電池