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11/08/2021

No.0526 カソードルミネッセンス(CL)法によるシリコンパワーデバイスの点欠陥・転位評価

SiCやGaN等のワイドバンドギャップ半導体を用いたパワーデバイスが盛んに研究されている。しかし、今後もシリコン(Si)半導体の重要さは変わることはなく、むしろその役割は大きくなりつつある。ここではカソードルミネッセンス(CL)法を用いた不良解析やプロセス最適化の事例を紹介する。

結晶欠陥の生成プロセスとデバイスへの影響

欠陥の種類
次元
生成プロセス
デバイス特性への影響
分析手法
点欠陥(格子間、空孔、複合)
0D
イオン注入とアニール、エッチングダメージ、機械加工キャリアライフタイム、キャリア濃度、表面リーク、転位や積層欠陥の原因ルミネッセンス(PL, CL)、電子スピン共鳴(ESR)、DLTS、RBSチャネリング、陽電子消滅等
転位、積層欠陥
1D, 2D
エピ成長、素子分離、イオン注入とアニール、シリサイド、機械加工接合リーク、キャリア濃度、耐圧低下ルミネッセンス(PL, CL)、TEM、エッチピット観察、X線トポグラフィ等
析出物(酸素析出)、バルク欠陥
3D
高酸素濃度ウェハの熱処理等接合リーク、耐圧低下エッチピット観察、ルミネッセンス(PL, CL)、TEM、SIMS、各種元素分析等

CL法を用いたシリコンパワーデバイス欠陥評価のメリット

1. SiCやGaNウェハに比べて、Siウェハは欠陥が少なく、 デバイスプロセスで生じた欠陥を同定しやすい。
2. Si単結晶では発光中心となる欠陥が多く、CLでは様々な点欠陥の発光が観測される。
3. 位置の確認にSEM像を利用でき、デバイス局所領域の評価に適している。
4. 加速電圧を変えることで深さ分析ができる。

評価事例

  IGBT中の点欠陥評価                    ドライエッチングダメージ評価   デバイスのリーク不良解析(転位評価)
IGBTについて、断面からライン分析を行った。
W線、C線は点欠陥に起因する発光線である。CL測定から
点欠陥の分布を調べることができる。デバイス中の点欠陥は、キャリアライフタイムやキャリア濃度に影響を及ぼす可能性がある。
ドライエッチング後に、TO線(バンド端発光)の強度が低下し、点欠陥に起因するブロードな発光が出現した。
CL測定はエッチングプロセス最適化に使用できる。
接合リークのあるデバイスにて、転位の存在を示すD線が観測された。デバイスプロセス中の過度の応力が原因で転位が発生し、リーク不良につながった可能性が考えられる。

カテゴリー

半導体・実装

分類

パワーデバイス・ディスクリートデバイス