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09/21/2021

No.0486 GCIBを用いたXPS分析

GCIB(ガスクラスターイオンビーム)は、エッチング時の試料ダメージがきわめて小さいため、従来は正しい結果が得られなかった有機物の深さ方向分析が可能となる。また、無機物表面の有機汚染クリーニング法としても有効である。

GCIB-XPSの概要とポリイミドの深さ方向分析
XPS(X-Ray Photoelectron Spectroscopy)は、表面~数 nmの元素組成と化学状態を分析する手法である。イオンエッチングの併用により深さ方向分析も可能であるが、Ar+イオンエッチングをポリイミドなどの有機物に適用した場合、試料損傷が著しく正しい結果が得られない。一方、 GCIBによるエッチングでは、ダメージを低減して分析することが可能である。また、GCIBは無機物に対してのエッチングレートが極めて遅いため、無機物上の有機物汚染のクリーニングとしての活用も期待できる。
        ポリイミド                 Ar+エッチング            GCIBエッチング
 
                                     破線:ポリイミドの化学構造から予想される値

電子線照射後のポリイミドのGCIB-XPSによる深さ方向分析

        GCIBエッチング                      C 1s
深さ方向の組成分布より、表面近傍で酸素濃度が減少していることが分かる。また、C 1sスペクトルより、最表面ではO=C-Nなどの官能基成分が減少しており、電子線照射の影響が示唆される。

GCIBエッチングによるNi金属箔表面のクリーニング

          ワイドスキャン                     Ni 2p

フッ素系有機汚染が存在したため、最表面ではNiの価数を判別するNi 2pピークが認められない。GCIBエッチングにより汚染を除去した後のNi 2pピーク位置より、Niの状態について、Ni0(金属)成分に加えてNi2+~3+(NiOやNi2O3など)成分の存在が分かる。

カテゴリー

自動車, IT機器, 材料・素材, ライフサイエンス

分類

電子ペーパー, 高分子材料, 有機材料・化成品, 金属・無機材料, 電子・機能性材料, 医療機器・医療材料, 着色・変色