09/24/2014
No.0032 駆動劣化後の有機ELパネルの構造解析
駆動に伴う輝度劣化は、依然として有機ELデバイスの大きな問題である。輝度劣化のメカニズムを明らかにするためには、構成される有機膜のどの成分が劣化しているのかを明らかにすることが重要である。今回有機ELデバイスを作製し、駆動劣化後のデバイスについて、蛍光分光法と、1画素分をマイクロサンプリングした有機膜について、MALDI-MS法および LC/MS法を組み合わせた劣化解析を行ったので紹介する。
作製した有機ELの有機層構造と駆動に伴う輝度劣化
Schematic illustration of organic light emitting diode (bottom emission type).
Operation time dependence of luminance.
作製した有機ELの有機層構造と駆動に伴う輝度劣化
MALDI-MSおよび蛍光分光法による有機EL層の分析
MALDI-MS spectra of OLED samples.
Fluorescence spectra of operational degraded OLED (normalized at 456nm peak)
MALDI-MS法による有機EL層の分析
MALDI-MSはレーザー光によるイオン化法によりソフトなイオン化が可能であるため有機成分の分子イオンを観測することができる。今回の未劣化品と70%劣化品との比較では、分解成分らしき成分は観測されていない。
蛍光分光法による有機EL層の分析
蛍光スペクトルは、ガラス越しに測定することが可能であり、非破壊での解析が可能である。駆動劣化に伴い、Alq3に由来する500nm付近の発光帯の強度が、456nmの2-TNATA由来の発光帯に比較して低下しており、Alq3層の構造変化が示唆される。
LC/MS (SIM) 法による有機EL層の分析
LC/MS (SIM) chromatograms of operational degraded OLED .
LC/MS法による有機EL層の分析
LC/MS法は混合物である有機EL成分を単離し、それぞれの成分の構造および濃度変化を知ることができる。1画素サンプリングの試料溶液濃度はおよそ数ppmからサブppmと極めて微量となるが、各有機EL成分の分子イオンをLC/MSで分離検出することにより、有機層の濃度変化を観測・評価することができる。
今回の試料を測定した結果、輝度劣化に伴いAlq3の検出強度が他の成分に比べ著しく低下していることが分かる。輝度劣化以上にAlq3濃度の減少が大きいため、現段階ではこれが主原因と断定できないが、少なくとも輝度劣化原因の一つとしてAlq3に物理的・化学的な変質が生じていると推定される。
このように複数の分析法を組み合わせることにより、1画素分という極微量の試料から実に多くの情報を得ることができる。
分析機能と原理
カテゴリー
IT機器
分類
有機ELディスプレイ