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02/19/2016

No.0296 超高速走査DSCによる熱分析の新展開

MEMS(Micro-Electro-Mechanical-System)技術により微小化したセンサーを搭載した超高速昇降温可能な示差走査型熱量計を導入した。本装置を用いることで、従来まで取得困難であった高分子材料等の高速昇温・急冷時の熱挙動を捉えられ、実プロセスの評価に適用できる。

●超高速走査DSCの装置外観

 

 

●汎用DSCとの比較

DSC種別
超高速走査
汎用
昇温速度10000℃/s~4℃/s
冷却速度6000℃/s~0.3℃/s
試料量 ng オーダー mg オーダー
データ取込0.0001s~0.1s
温度域-80~400℃-150~700℃

汎用DSCの1000倍以上の高速走査が可能

●溶融状態からクエンチしたPETフィルムのDSC曲線(昇温過程)


汎用DSC (昇温速度0.17℃/s)
ガラス転移温度(Tg)以上で非晶鎖が並進運動を開始し、
結晶を形成(冷結晶化)する。最終的に結晶は融解する。
正確な熱量算出にはベースラインの引き方が重要となる。

超高速走査DSC (昇温速度2000℃/s)
『昇温速度 > 冷結晶化速度』 により、冷結晶化が抑制され、
試料本来の状態を反映したデータが取得できる。


●ポリスチレンのTgと昇温速度の関係

ガラス転移シグナルは観測の時間スケールによって変化する。
昇温速度が速いほどTgは高くなる。汎用DSCの測定条件で
取得できる値よりも20℃以上も高温側に現れる。


●溶融状態のポリプロピレンの冷却速度依存性

溶融状態から-60℃/s以上で急冷させると、結晶化の
PeakⅠより低温側にも結晶化ピーク(PeakⅡ)が
認められる。射出成型に近い急速冷却では、中間相が
形成されている可能性が示唆される。

超高速走査DSCの適用例
  ①高速走査を伴う実プロセスの模擬、 ②急速熱処理シミュレーションの検証
 


カテゴリー

ライフサイエンス

分類

診断薬・検査機器・バイオセンサ