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09/26/2014

No.0097 リチウムイオン電池 内部ガスの組成分析

リチウムイオン電池(LIB)は携帯電話やノートPC、自動車等のバッテリーとして幅広く用いられているが、近年、その高容量化やサイクル特性向上に加えて、安全性への関心が高まっている。LIBには有機溶媒が用いられるため、セル内でガス発生の懸念があり、発生のメカニズムや原因の究明が求められている。

ここでは電池内部のガスを採取し、GC及びGC/MS法で組成分析する手法について紹介する。また分析例として、経年使用で容量低下したLIBについて、電池内部ガスの組成を分析した事例を示す。

電池内部ガスのサンプリング・測定方法

本方法では試料を密閉容器に封入し、容器内部で開封することで外気のコンタミを抑え、一つの試料で複数項目の評価を可能にした。

電池内部ガスのサンプリング・測定方法


市販LIBの内部ガス分析事例

LIB内部ガスについてGCおよびGC/MS法で組成分析した結果を、以下の図表に示す。 水素(H2)、酸素(O2)、窒素(N2) の分析

水素(H2)、酸素(O2)、窒素(N2) の分析

* 濃度補正に使用 H2が特徴的に検出された。


一酸化炭素 (CO)、二酸化炭素 (CO2)、低沸点有機成分 (C1~C2)分析

一酸化炭素 (CO)、二酸化炭素 (CO2)、低沸点有機成分 (C1~C2)分析

CO2が比較的強く検出され、またメタンやエチレン、エタン等の低沸点炭化水素が検出された。


低沸点有機成分 (C3~C10程度)分析

低沸点有機成分 (C3~C10程度)分析

電解液の溶媒であるDMCやEMC、DECが比較的高い濃度で検出され、その分解物と思われる脂肪酸エステル等が検出された。


Compounds
Concentration* (vol. %)
DL**
Hydrogen(H2)
58
a
Carbon monoxide (CO)
0.38
a
Carbon dioxide (CO2)
29
a
Methane
4.9
a
Ethylene
0.11
a
Ethane
3.5
a
Fluoroethane
0.08
b
Dimethyl ether
0.18
b
Ethyl methyl ether
0.41
b
Diethyl ether
0.056
b
Dimethyl carbonate (DMC)
0.75
b
Ethyl methyl carbonate (EMC)
1.4
b
Diethyl carbonate (DEC)
1.1
b
Carboxylic acid esters
0.67
b
Other hydrocarbons
0.23
b
Total
100
-
*
空気以外の合計を100%として補正した濃度を示した。
**
Detection limit (calculated by 1ml sample gas) a:<0.01%, b:<0.001%

LIB内部ガスを分析した結果、LIB由来の主要な成分として水素(H2)、二酸化炭素(CO2)、炭化水素化合物等が検出された。
検出されたH2、CO2、メタン等の炭化水素や脂肪酸エステル等は電解液の溶媒の分解物と考えられる。別途行った電解液成分の分析において、有機溶媒と思われるEMC、DECが検出されており、これらの溶媒が充放電あるいはセルの温度上昇により分解され、ガスが生成した可能性が推察される。

密閉容器を変えることで、様々なサイズ・種類の試料に対応が可能
GC、GC/MS、IC法を組み合わせ、詳細な組成分析が可能
 

関連する技術資料

No. 0096 リチウムイオン電池 構成材料の熱安定性評価
https://web02.tsc.collab.cloud/news/trc/news_rd01.nsf/0/E40021FF1684CD8849257D5F00230C75?open
No. 0391 LIB周辺材料・バッテリーパックの評価
https://web02.tsc.collab.cloud/news/trc/news_rd01.nsf/0/C80739E27562E3704925850F0029528F?open

分析機能と原理



カテゴリー

電池

分類

リチウムイオン電池